人間の集団で一番大切なことは、目的にむけて心を一致団結させることです。それによって無意識の世界のとんでもない能力が引きだされます。信じられないことでも実現できます。
プロ野球の鶴岡マジックだの野村マジックだのと同じですね。このカントクの下で日本一になるぞ!と全員の心の力がひとつの方向へまとまったとき、「神が立ちあがる」のです。
これは、日本の武道にも同じことが見られると思います。剣道で打突する部位の名を「メン!」と言葉に出して叫ぶのは、それによって体の細胞の一つ一つすべてに「メン」を打つという目標へそれぞれエネルギーをだせよと指示しているのです。「メン」を打つという強い意志を気合いにのせて、全身の細胞をその方向へ振動させ、エネルギーをだしてもらうのです。
熟練した剣道家ほど、より全身の細胞が一瞬で1つの方向を向きやすくなり、その結果、「見事なメン」が決まるということになります。空手でも同じでしょう。目の前に何十枚も積まれた瓦を空手で一気に割るとき、言葉にせずとも空手家のなかでは気合いにのせて同様の強烈な指示が細胞1つ1つに出されているのだと思います。
そしてそれは、あくまでも「指示」であって、「命令」や「強制」ではありません。個々の細胞は人間全体という宇宙の役に立つことを喜んでいる。そのすべてのエネルギーを同じ方向へ動員するのが人間の「意識」にまかせられた仕事です。
人間と大宇宙との関係も、これと同じだと思います。
ついでにいえば、高い樹が水を吸いあげることができるのも、同じようなことではないでしょうか。何十メートルもある樹のてっぺんの葉っぱにまで、水は吸いあげられます。重力に垂直に逆らってこんな仕事がなぜできるのかといえば、1つ1つの細胞がすこしずつ協力した結果なのです。
1本の管のなかを水が何十メートルも昇っていくのは物理的に不可能です。ですが根っこから幹、枝の隣り合わせた細胞同士の間で少しずつ水をやりとりして、細胞膜を通過させて水をてっぺんにまで運ぶのだそうです。すべての細胞が「納得」して、同じ目的へ同じ方向をむいてはじめて実現できる仕事です。しかも日常的に、樹はこれをやりとげています。感動ものです。
もともと宇宙はこのようにできているのでしょう。
では宇宙が人間にもとめる生き方は、どんなものでしょうか。自分ひとりの勝手な欲求を押し通してバラバラに生きることではないはずです。協調するということになると、「思いやり」が絶対条件になります。他人さまが何を考えているか、何を感じているかを常に考えて、それを基準に自分が動く。そうすれば「この世」は円滑に発展できます。
日本人はそのことを、古くから知っていた民族でした。だからさっきの剣道のような武道が、ほかの国でなく日本だけで独自に生まれ、発展したのです。
神さま、仏さま、今日の気づきを、ありがとうございます。
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