日本のレストランや食堂では、入り口に食品サンプルがおいてある店が少なくありません。プラスチックみたいな材質でつくった、できあがり商品のかたちをした模型です。この名前の商品は、こういう姿かたち、色合い、量でご提供されます。どうぞ、うちで召し上がっていってください、という入店前のお客様へのお知らせ、宣伝であり、ごあいさつです。
子供のころからふつうに見ているので、当たり前のものだと思っていたら、日本独自のものなんですね。ここ10年以内ではないでしょうか、それを知ったのは。「へえ~」と、思いました。しかし、日本独自というこの食品サンプルに、日本人の精神性がよく表れていると、私は思います。「日本のこころ」の象徴のひとつといえるでしょう。
日本の食品サンプルには、お客様への気づかい、思いやりが表れています。この店への入店やこの料理を見ること食べることがはじめてのお客に、こういう食品ですよと、一目でわかる「気くばりのかたまり」です。よく海外旅行のあるあるで、レストランにはいってメニューを見たはいいが、何が書いてあるのかわからない、言葉がわかってもどういう代物か想像もできない、あてずっぽうで注文してみたら、とんでもないのが出てきた、というのがありますね。あれは世界じゅうでおきている現象のはずです。
日本人は、そういうことをなくし、お客様に寄りそう心で、この食品サンプルという独自の文化を育ててきました。新型コロナで今後の外国人観光客の来日は先行き不透明ですが、外国人にとって、日本はそういうことの起きない、世界で唯一の、「安心できる国」になっているのです。
それは同時に、この姿どおりに実際につくらねばお客への裏切りになる、という責任感の表れです。日本人のお店は、食品サンプルを掲示することで、「責任もってつくりますよ」と自分の責任をお客様に提示し、同時に自分にも責任の覚悟をさせています。誠実さ、正直さの表れでもあります。
これらの「気づかい」は、どうしても、絶対になくてはならないものでもないかもしれません。だからこそ、日本以外の国では、食品サンプルという発想自体がない。しかし日本人は、「あれば、みんなが快適になるもの」の開発に一生懸命になります。食品サンプルが日本にあって、その他の外国にないことは、大きな意味があると思います。すこしも「小さいこと」ではありません。
そしてこうした日本の独自性の底にあるのは、やはり、「つながりコスモロジー」という宇宙観だと思います。日本のレストランが世界じゅうへ進出して、食品サンプルという「日本のこころ」を発信しはじめています。この文化に直接ふれることで、世界じゅうに日本の宇宙観が浸透してゆくことを、願います。それは、宇宙のよろこぶことだからです。
神さま、仏さま、今日の気づきを、ありがとうございます。
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