以前、自分を変えなきゃと思い参加した心理カウンセラー養成講座の懇親会で、ある速読法の話題がでました。それを教えるセミナー主催者が何人か紹介されるなかで、「レイキ」スクールも開いているある先生の話になりました。「レイキ」という言葉を聞いたのは、これが初めてでした。
「アチューンメントをいうのを受けると、すぐに手から気がでるようになって、ヒーリングに使えるんです」との説明が終わる前に、私は自分の顔のまえで手を左右にゆっくりとふって、「あー、そういう話は結構ですわ」とやんわり拒絶したのを覚えています。
高校～大学時代に武道をかじり、中国本土で知り合った高齢の中国人から気功の実技を見せてもらっていた私には（ただしヒザに手を当てられても何も感じなかったが）、「そんな簡単に手から気がでてたまるか」というのが第一印象で、まったくとりあう気にもなれませんでした。
いまはどうか知りませんが、別の中国人の友人の話でも、中国の気功では呼吸法やらなにやらの修行を１０年つんで初めて入門の入り口にたてる、そういう世界だと早くから聞いていたので、「ふざけるな」と私がむしろ怒りを覚えたのも無理はありません。
〈生まれて初めてのアチューンメント〉
しかしその後、本やネットで「レイキ」の情報がすこしずつ入ってきて、どうせ速読法の学校を選ぶのだから、その「変なの」もやっている所で学校の雰囲気やら見極めればいい、と考えました。そこで速読法を受講してみると、レイキの話もでて、思ったほどうさん臭くもないかなと感じたので、今度はレイキ講座を申し込んだのです。初心者なので、一番最初にならうファーストのクラスです。
とはいえ、速読法なら科学的根拠もあるでしょうが、「手当てヒーリング」なんて、まったく生まれて初めてです。「このツボ、１００万円で買え」みたいな話がでたら、力づくでも走って会場を飛び出そうと決めて、会場入り口のドアがどっち開きか覚えて、自分の靴を下駄箱の一番ひったくりやすい場所に入れて、会場入りしました。いまとなっては、笑い話ですが、それくらい「やばい世界でなけりぁいいけど」という気持ちが残ったままの「入門」でした。
しかし、講座が始まると、別にカルト集団みたいな異常さがあるでもなく、講師からも受講生からも、私自身からも笑いがもれるありきたりの雰囲気でした。年配の女性がおおく、「長いこと持病でこまっていて、病院ではサジを投げられたので、気の世界をたよってきた」という方が何人かいました。なかには７０代の母親に５０代くらいの娘さんがつきそいをかねて自分も習いにきたという２人組もいます。みな真剣に病気を治したくて参加したのが伝わってきました。他の受講生もみな、ふつうのおじさん、おばさん、お兄さん、お嬢さんで、安心しました。
さて、この日はファースト、セカンド、サード、(自分の講座を開ける)ティーチャーの各クラスのうち、ファーストです。アチューンメントをしてくれる先生が５～６人いて、それぞれに受講生５～６人がついて、順番に１人ずつ、個室のように区切った場所にはいって行って、アチューンメントを受けます。終わると、待っているほかの受講生たちのなかにもどり、5～6人ずつ1グループになって、それぞれにレイキマラソン（横になった1人に対し、その他の全員で手を当てレイキを流す）をやりながら、先生の笑い話を聞き、自分の次のアチューンメントを待ちます。
アチューンメントは全員が3回ずつ受けました。受けている間、目をつぶっているので受講生には先生の動きは見えません。なにか自分の体のまわりで先生が動いている気配は感じられました。
なにしろ、生まれて初めての経験です。とちゅう自分の胸に手を当てるよう先生の手で誘導されました。自分の手の平からなんだかあったかいものが胸にしみるように広がった…と感じたのですが、終わってみたら、なんだか緊張していたせいか、その印象もあやふやになってしまいました。
先生から「気功でもやってるの？気の力を強く感じたけど」と言われました。ほんとかな、と思ったけれども、なんだかうれしかったのを覚えています。
それで、2回目のときには自分の感覚をしっかり自覚するぞと決めて、受けました。よく意識していたら、やはりさっきの印象どおり、胸に当てた自分の手の平からしみるような深い温かさがジワーと広がって、泣きたいような気分になります。「こりゃあ、まがいものじゃない。先生は手を当てているだけなのに、これだけの変化がはっきりと出ている」と自覚できました。
アチューンメントのあとも、右手の熱い感じは残りました。（この後ほとんど1年間ずっと毎日、自分の両手の平は熱く感じられた。この間、受講前までの「常温」の手の平の感覚を完全にわすれてしまった。それくらい毎日、熱く感じた。）
どちらかというと、レイキマラソンの方がいろんな人に何度もやったせいで、たくさんのことが印象に残りました。
① ある女性の両足の裏を私の両手で片方ずつ手当てしたとき、「左の足の裏だけ熱い」といわれました。彼女はうつぶせで、私一人で両足をやっているとは知りません。同じ人間が同時にやっているのに片足だけ熱く感じるなんて、とレイキの不思議さをはじめて覚えました。
しかし、自分のやっていることでそんなふうに人が喜んでくれるのがピンときませんでした。人と気持ちを通わせることに不慣れになっていたのかもしれません。考えてみれば、このレイキでの最初の経験が、自分の感性を少しずつ呼びもどすきっかけになったのだと思います。だから、最初は他人事のように、「へー、なんだろう、この反応は」という感じでした。
② うつ伏せの別の女性にたいして、片脚のヒザ裏とふくらはぎに両手をそれぞれ当てました。しばらくして左手のみをモモに当てかえた瞬間、「あ、いまモモがスゴイ、熱い！」と、彼女がちいさく叫びました。あとで、別のグループでこの女性と同席したら、私の手当てだったと覚えていて、わざわざ「さっきはモモのところのあなたの手が特に熱かった」と言われました。またも「へー」と他人ごとのように聞いていました。自分がしたことのようには思えませんでした。自分のしたことがこんなに感心してもらえるなんて、とあっけにとられていました。しかし、このとき私は、「こんな自分でも、人に喜んでもらえることがあるんだ」と、長いこと忘れていたかもしれない感情を思い出しつつあったのです。レイキという初めての世界に、思い切って飛びこんだことによって。
〈深いところから湧いてくる喜び〉
ただ、急いでつけ加えておきますが、このときはたまたま私の手がお二人に特別熱く感じられただけです。ほかの人の手が熱かったという話がでるなかで、私の手当てもほかの数人とおなじく強く印象には残らなかったのかな、という結果になったことのほうが多いです。
（そもそも、受け手の「熱い」感覚は施術の効果にあまり関係ないらしいことは、この後経験を積むにしたがって、だんだんわかってきました。ただし受け手本人が、すごいエネルギーを流してもらってありがたいという気持ちになるのなら、それはそれで良いことですが。）
反対に、自分が横になって大勢に手を当てられているとき、しみじみとありがたく感じました。このときまで、私はたたかうとか、ぶつかるとかいうことで他人を意識することの多い生き方をしてきたかもしれません。それが、他人に「いやしてもらう」というひさしぶりの経験に（もしかしたら幼児のときに母親にやさしくなでてもらって以来かもしれない）、むしろ私のからだは、とまどっていたかもしれません。
手当てされながら、「いま、ここで、この人たちと出会って、オレの体が彼らの手の平でいやしてもらっている」と、何度も思いました。そして、自分がいまここにいるというのは「偶然」ではない、自分が自分を創りなおそうと決めたからだ、と思いました。講師からは、「この会場で手の平を熱く感じて、帰宅後にはなんとも感じないとしても、大丈夫です。いつも熱く感じるというものではありません」と注釈がつきました。
この数日後のセカンドの講習でも、印象的だったのはレイキマラソンです。参加者に、妊娠中の30才くらいの女性がいました。ほかの受講生数人とともに彼女に手当てする前に、私は「母子ともに健やかでありますように」とアファメーションを唱えました。手当てしているとき、私まで幸せな気分になりました。この人のお腹のなかの赤ちゃんはいま、オレの手から吸いとるレイキをどんな風に感じているだろうか、どんなに幸せだろうか、どんなに平安な気分だろうか…、と感じていたら、自分の心まで深く安らぎました。赤ちゃんに、ありがとうと言いたい気持ちでした。
自分にもまだこんな感情が残っていたんだ、と気づきました。そして、こんなオレでも、人の役にたてるのだ、とうれしかった。この喜びは昔覚えたのとは質の違うもの、というより、湧いてくる場所が違う感じがしました。本を読んだり、映画をみたときの感動とも違うし、友達と一緒になにかしたときの喜びとも少し違う、自分のなかのうんと深いところから、ジワーと湧いてくるうれしさ、ありがたさに感じました。
いまの私から考えてみれば、このときのお腹の赤ちゃんは、私自身だったのかもしれません。
新しい私が生まれて、それに対して「健やかでありますように」と自分自身で願ったのです。そのために、あの妊婦さんはあのタイミングで、私の前に現れてくれたのかもしれません。宇宙のとりはからいによって。
神さま、仏さま、レイキとの出会いを、ありがとうございました。
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