末期がん患者に、臨終寸前まで手当てした

末期の肝臓ガン患者に、手を当てた。15年来のつきあいになる80代の男性。知り合ったときすでに、「治療しながらガンと共生している状態だよ」と言っていた。丸山ワクチンを使いながら、大学病院に通院、治療しているという。

これまでずっと私のレイキ施術をなかなか受けようとしなかったのに、この年にまた何回目かの入院をしたとき、施術してくれと奥さんをつうじて急に言ってきた。よほどの心境の変化だなと思い、すぐにお見舞いにいった。

あお向けで目をつむったまま、「ハアハア」という荒い息づかいで顔を左右に激しく振っている。奥さんは落ち着いたようすでベッドの近くに座っている。「苦しくてあえいでいるわけではない?」と聞くと、そうではない旨、医者から説明されているという。

 頭頂、丹田、足首、足裏などに手を当てた。額や側頭部にも当てたいが、動きが激しくてできず、頭頂にやや浮かせながらの形になった。丹田は気力の充実のため、足首と足裏は解毒のためと考えてやった。

ここに手を当ててもいいですか?と私が問いかけると、奥さんが本人の耳に口を近づけて大声で伝えてくれて、そうすると私がしやすいように姿勢を少しかえたりしてくれる。意識ははっきりしているようだ。

意外だったのは、ヒビキがどこも強くない。末期ガンなんていうと、ムチャクチャに強いヒビキが上がってきそうな印象だが、実はクスリを多用しているせいで、そうはならないことを後に知った。なんだか霧のなかで相手が見え切らないような「ン?…」という感じを少し抱えながら、「とにかくレイキは流れているんだから」と思って、手を当てつづけた。

印象に残ったのは、何本ものコードにつながれた姿。誰だったか、「病院の入院患者は、スパゲッティ状態」と表現した方がいた。体のいろんなところに計測機器のコードがからみ合うようにくっつけられて、冷たくて固い機械とつないである。コードをさわって接続が切れたりしたら大変なので、気をつけながらの手当てとなった。

こうしたレイキお見舞いを2日やった。

その後、3日目のお見舞いとなった晩。病室にはいると奥さんが私の顔をみるなり、部屋のすみへつれていって、「実は今夜でおそらく逝くだろうって、医者から言われたから、今日はやらなくていいよ。せっかくやってもらっても、ムダなだけだから」という。驚いたが、かりにご臨終であっても足裏にレイキの手を当て続けるのが、患者本人にとって意味がある、と説明していつもどおり手を当てた。

じきに長男、その奥さん、次男、の3人がやってきた。「今夜はみな、ここで一晩こすから」と、人数分の毛布を家から持参している。一家の大変な局面に居合わせている実感が増した。

私への気づかいはいらないから、手当てを続けさせてくれないかと提案すると、ほかの話もしながら30分ほど時間をおいたあと、長男が「ぜひお願いします」と言ってくれた。彼らの母親(患者の妻)は、私が毎週1回やってきたレイキ施術会をずっと手伝ってくれた人なので、ふだんから息子さんたちもレイキに理解があるようだった。

しかし、手を当てながら必死に考えた。自分は退去して、家族水入らずで「最期の夜」を過ごしてもらうべきではないのか?…それとも、快復する可能性は低くないと信じて、一晩じゅう手を当てつづけるか?…それは実は私の「エゴ」ではないのか?…しかし、医者にサジを投げられた年配の患者でも何度も「奇跡的に」窮地を脱した話も見聞きしている…。

でも結局、ここは病院であり、現代医学の判断は「今夜でおそらく逝く」とはっきりしている。そこがつまりは、大前提となるんだろうなあ、というのが結論となった。「医学的根拠」のない私の希望的観測は、私にとっても「危険」だ。

手当て開始から2時間後の夜7時、私は病室を退去した。

 翌朝7時。出勤前に電話したら、「ゆうべ、あのあと静かに逝ったよ」と奥さんから告げられた。多くを聞く時間はなくて、夕方になって電話し直した。

「あなたが帰ったすぐあと、(患者の)体温が上がった。看護士がナースセンターから飛んできて、解熱剤を打った。すぐに体温が下がって(体を振りつづけていた患者が)静かになって、私は『あ、まずいかな』と思った。2時間後にそのまま、息をひきとった」。

レイキの視点からは、「体温が上がった」のは、施術後ふつうにあることで、レイキヒーラーなら、ふつうの治癒反応とみる人がほとんどだろうとは思った。しかしそこは病院であり、入院患者の体温が上がった、(指示されているとおり)解熱剤を打たねば、と看護士は「医学的根拠のある対応」を一生懸命してくれたのだ。

患者、その家族、病院(医師、看護師)などとの相互理解が大事だという、当たり前のことにつきるのだけれど、結果を知らされてさまざまな思いが交錯した。忘れられない経験となった。

神さま、仏さま、今日の気づきを、ありがとうございます。

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