日本人のコメ食が、西洋料理を「洋食」に育てあげた

 コメは、あらゆる料理を受けいれます。明治維新の「文明開化」でフレンチやイタリアンなど西洋料理が日本にはいってきたとき、それらはそのままでも日本人に受け入れられたかもしれませんが、一方で日本独自の歩みを始めます。「洋食」へと変容したのです。

 その原動力となったのが、コメ食です。日本人は西洋料理を食べるときに、コメと一緒に食べたほうがおいしいことに気づいたのでしょう。それで、コメとの食べ合わせがよりよくなるように、西洋料理を改良していったのです。ハンバーグ、ステーキ、フライなどにかぎらず、インドのカレーだって、コメ食という軸のまわりに取りこまれながら、日本食のなかの「洋食」というジャンルに姿を変えたのです。

 こう考えてみると、コメは、日本の神さまとおなじ存在です。

 日本人のものの考え方の基本は、神道です。日本人が意識するしないにかかわらず、神道の宇宙観のうえに、すべての日本人の生活様式がなりたっています。神道式にものを考え、感じているのです。その神道では、「やおよろずの神」というように、すべてのものに神がやどっていると考えます。

 そこへ外国からやってきたものは、仏教だろうがキリスト教だろうが、ダルマさんだろうがサンタクロースだろうが、「やおろよずの神」のひとつとして取りこまれます。そして、日本式に姿を変え、磨きあげられる。「神さま」はかわらず中心にいます。コメとおなじですね。

 あらゆる料理が、コメという主役の「わき役」になりえます。そして、コメを主役とする日本独自の食事スタイルが「定食」です。だから、定食ではコメは絶対においしくなければなりません。この点をとくに意識してコメをえらんでいるお店は、どれくらいあるのでしょうか。

 ふだん食堂で何気なく注文する定食ですが、日本人の宇宙観がここに表れていると一瞬、考えて食するのもいいですね。ちなみに京都ではおかずのことを、コメのまわりに位置するという意味で、「おまわり」と呼ぶそうです。

神さま、仏さま、今日の気づきを、ありがとうございます。

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