電話でもおじぎ、「こころ」を伝える日本人      

 日本人は電話で、「よろしくお願いします」とか「またお待ちしております」とか伝えるとき、さかんにおじぎをすることが多いです。外国人がこれを笑って、「相手から見えないのに、おかしいでしょ?」と首をかしげます。

 20~30代にかけて、アジア系や欧米系の外国人とつきあいがあったので、外国人から見たら、その日本人のしぐさが滑稽にうつるのを、私も知っています。もう数十年前の香港での話ですが、地元の日系新聞社が香港人に「日本人をみて不思議に思うこと」をアンケートしたところ、多くの人が「電話しながらお辞儀する姿」を挙げました。

 これに対してどう説明したらいいか、自分でもよくわかりませんでしたが、その何十年か後に、ある手技療法の体験学習会で、答えが見つかりました。

 床にあお向けに寝て片腕を横になげだし、別の受講生に親指の腹でその腕の一点を押してもらいます。その際に、押す側が「この人の幸せ」を本当に文字通り「心の底から」願うと(これがスグにはなかなかできないのですが)、受け手はその思いを押された一点だけでなく心と体でズシーンと感じます。これは本当に重く、あたたかく、感じます。

反対に、心が深まらないまま押されると、受け手はとがった痛みを感じるだけで終わります。受講生同士で相手を何度も替えながら、これをくりかえし体験することで、「真心で施術する」大切さを学習するプログラムです。

 最初のころ、身長180センチほどもある、がっしりした男性に押してもらいました。体重をのっけて、私の腕の一点を押します。肉を突いてくる硬い痛みしか、感じません。こんなものだろうと、思っていました。ところが、すぐあとに小柄な20才の女性に押してもらって、目からうろこでした。さっきの男性よりはるかに軽量で、しかも体重をかける体勢でもないのに、ズシーンときた。

 そして、指導者に押してもらうと、さらにすごい体験となりました。体の「一点」を「押されて」いるのに、私の「全体」(心と体のすべて)を、下から「支えられている」感覚です。深い安心感さえ覚えます。人間が心を深めると、これほど大きな価値が相手に伝わるんだ。いまでも衝撃を忘れられない、貴重な経験です。

 日本人は見えない相手であっても目の前にいる気持ちで、自分の心の深さを言葉にのせて伝えようと心がけます。日本語でいう「まごころ」です。日本人は電話で、「こころ」を伝えようとするのです。

 自分の心が深まるほど、その思いは相手に深くつたわることを、日本人は民族の心で知っています。生まれてから暮らしのさまざまな場面をつうじて、それを心得るような「訓練」をされて、「日本人」になるのです。

 日本人にとっては電話でのお辞儀も、理由を考えたこともない自然なしぐさ、当たり前の心のありようなのです。だから、外国人から「なぜ?」「ヘンでしょ?」と急に言われても、多くの日本人は説明にこまってしまう。

 しかし、これからの日本人は、「説明」できなければなりません。自分の居場所を守るために。

 宇宙観 神さま、仏さま、今日の気づきを、ありがとうございます。
 

 

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